大分県のコンパルホールから実施報告が届きました。
主催:コンパルホール
開催日:平成25年8月17日(土)
上映作品:プログラムJ―夜の河 1回、雪国 1回、五番町夕霧楼 1回、五瓣の椿 1回
今年度で3回目の開催を迎えた文化庁優秀映画鑑賞推進事業。
例年大変好評で、60代以上の方を中心に多く来場していただいている。リピーター率も高く、夏の恒例事業として定着化してきたことから、開催時期は昨年と同様に盆明けの土曜日に開催した。
昭和を代表する大女優が主演をつとめる「文芸もの」「時代もの」とあって、ターゲットとなる高い年齢層には大変魅力的なプログラムだったと思われる。4本全て鑑賞された方は179名を超えた。
上映順序は来場者の会場停留時間に密接に関係するとため、例年、配慮して決定している。入れ替え制ではなく、「一度入館したら一日同じ席で鑑賞可能」という昔の映画館に来た懐かしい感覚で楽しんでいただける上映スタイルをとっているため、スクリーンサイズ、作品の内容及び上映時間、総合的なバランスを考えて上映スケジュールを組んだ点において、実施後の実行委員報告会で良い評価をいただいた。
1作品目の「雪国」は、定員500名に対して464名が来場。2作品目に繋がる良いスタートとなった。午前中の来場客層は、60代以上が9割で、時間が下がると30代から50代も見受けられた。3作品目終了後、会場を後にする人が増えたものの、4作品目の「夜の河」でも266名に鑑賞していただき、1作品の平均入場者数は約350名を超える結果となった。
昨年に続き、作品鑑賞をより深めていただくためシネマトークを開催した。映画論をご専門とする衛藤賢史教授を迎え『女優で魅せる映画』と題して、作品の見どころだけでなく、日本映画黄金期の女優について興味深く話していただいた。時代背景と女優を追った内容は大変好評で、 来場者からも「映画の面白さが倍増して、この企画がより充実したものになったと思う」とのコメントをいただいている。
ロビーでは、軽食の販売ブースを設けたほか、近隣のコレクターから協力を得て、古い日本映画のポスターを十数点展示した。BGMにも気を配り、1日 映画を楽しんでいただけるような会場づくりに力を入れた。
入場者数は延べ1,424名。これは、1年目の746名、2年目の1,056名を上回る結果である。当日券販売も、昨年の162枚を上回る193枚となり、チケットの購入者は653名。
当館が良い実績を残せていることは、図書館が併設の複合施設であることや、大分市の中心地という立地条件の良さに加え、地方としては文化的価値の高い映画を観る環境に恵まれているからだと言える。(街なかに単館系映画館 シネマ5があり、近隣の由布市では毎年、湯布院映画祭が開催されている。)アンケートからも、企画上映に対する需要と関心の高さが伺える。
今後も地域の有識者とさらに連携を深め、本事業を発展させていきたい。
今回、定員500名に対してほぼ満席の状況もあったため、詰めて座ってもらうアナウンスや、遅れ客対応に追われた。シネマトークでも、350名を超える入り状況の中、懐かしさのあまり来場者の感嘆の声が大きく、「隣席の話し声に悩まされた」「注意を促してほしい」との声が寄せられた。
今後の課題は、スタッフによるホール案内の向上も含め、快適に映画を見ていただけるような運営面の見直しである。
事業終了後の実行委員会では、来場者を分散させるような上映日程への見直しが主に議論された。上映日数を1日から2日間に変更するなどして、「どの日に行くか」という選択肢を持っていただけるよう工夫したい。開催日数を増やすことは、常連層からの希望も多い。トークショーの回数を増やしたり、関連する短編作品を企画上映したりなど、内容の幅を広げることができ、若い世代の取り込みにも繋がりそうである。
とはいえ、本事業が60代以上の客層によって支えられていることは言うまでもなく、「綺麗なな女優さんに“会えて”嬉しかった(70代女性)」というような、年に一度、本事業の開催を心から楽しみにしてくださっている方々の声を大切にしたいと思っている。
DVDでは味わえない貴重なフィルム上映の良さや、他人と同じ空間で同じ感動を得る楽しさを、より多くの方に知っていただけるよう、ホールとして尽力していきたい。