1963年 日活
白黒/シネマスコープ/モノラル/95分
今東光の自伝的な同名小説が原作。悪太郎と異名をつけられるほどの素行不良学生・紺野東吾は、新たに受け入れられた兵庫県豊岡の中学校でも気ままに振舞い、喧嘩に恋に青春を謳歌するが、突如として厳しい現実を突きつけられる…。大正浪漫三部作など奇抜な映像表現で知られる鈴木清順監督だが、本作では同じく大正時代を背景にしつつ、山内賢演じる東吾の豪放磊落さと、初々しい恋心を清々しく情緒豊かに描いている。東吾が思いを寄せる女性・恵美子を演じるのは和泉雅子。和泉と山内は多くの作品で共演する一方、のちに歌手としてもデュエット曲「二人の銀座」が大ヒットした。美術は本作が最初の鈴木清順作品となった木村威夫。郡上八幡など各地のロケ撮影と、造りこまれたセットが白黒画面の中で融けあって、大正時代の地方都市の雰囲気を醸し出している。この後も鈴木清順と木村威夫は『けんかえれじい』や『ツィゴイネルワイゼン』などの名作を生み出していく。