1955年 日活
白黒/スタンダード/モノラル/110分
夭折の歌人・中城ふみ子の歌集に感銘を受けた田中絹代が、「演出者としての全生命を打ち込んだ作品にしたい」と臨んだ監督第3作。短歌作りに打ち込むふみ子(月丘)は、身勝手な夫に疲れ子どもを連れて実家に戻るが、乳がんに冒される。田中絹代は本作で、監督として初めて女性脚本家と組んだ。歌人でもある脚本家・田中澄江は、実話をもとに表現者としての苦悩や女性同士の繋がりを緻密にシナリオ化している。月丘夢路は、監督の熱意に応えるかのように、乳がん手術で乳房を失った女性の欲望や感情の機微を見事に表現。代表作とされる本作をはじめとして、田中絹代が監督した6本の作品は現在世界的に高い注目を集めている。