1952年 東宝
白黒/スタンダード/モノラル/143分
それまで無気力に生きてきた一人の役人が、死という絶対的なものを目前にして、自分を見つめ直し、人間としての尊厳をとりもどしていく姿を描いた作品で、主役を演じた志村喬の〈ゴンドラの歌〉が感動的。胃癌であると知った男は、夜の街をさまよっては見知らぬ男と暴飲に明け暮れるが、部下の言葉により生き方を変えはじめる。映画の途中で場面が突然男の通夜へと変わり、参列者の回想により、男のそれまでの行動が断片的に描かれるという、特異な物語構造も注目を集めた。第4回ベルリン映画祭でのベルリン市政府特別賞受賞や、「キネマ旬報」ベストテン第1位など国内外で高い評価を得た。黒澤明と脚本家の小國英雄が初めて組んだ作品でもある。