1965年 東映(東京)
白黒/シネマスコープ/モノラル/183分
原作は、「週刊朝日」に連載された水上勉の長編推理小説である。北海道で脱獄囚による強盗殺人事件が発生した。その日は青函連絡船の遭難事故が起きた日でもあり、事件の解明は難航を極めた。やがて10年の歳月が過ぎた頃、舞鶴で女性の変死体が見つかったことから、事件はようやくその全貌を見せはじめた。貧しさから脱出するため罪を犯した男、貧しさゆえに犯人の恩を忘れなかった女、そして事件を執念深く追いかける刑事ら、社会の底辺で懸命に生きる人々の喜びと悲しみを描いたこの作品は、深い人間観察による力強い演出で内田監督の代表作であると同時に、戦後日本映画の成果の一つでもある。荒々しい質感を出すため、16mmフィルムで撮影が行われた。ちなみに、爪のエピソードは原作にはなく、映画独自のもの。三国連太郎と左幸子の力演、そして〈喜劇の伴淳〉がシリアスな老刑事を演じて見事である。「キネマ旬報」ベストテン第5位。