1983年 東宝映画
カラー/アメリカン・ビスタ
モノラル/140分
昭和の世を迎え、零落の一途を辿る大阪・船場の廻船問屋、蒔岡(まきおか)家の四姉妹を主人公にした谷崎潤一郎の代表作を、市川崑監督が東宝創立五十周年記念の大作として映画化。市川監督としては、『鍵』(1959)に次ぐ二度目の谷崎作品で、監督デビュー当時より念願していた作品である。「細雪」の映画化は、阿部豊(1950)、島耕二(1959)に続いて三度目。今回の映画化では、物語を一年間に凝縮させ、幾度となく破談となる三女・雪子の縁談を軸に、四季折々の美しい風景を交えながら、大店の家族の生活ぶりを絢爛と描いている。見事な編集により主要な登場人物を紹介するオープニング、たわいのない日常のディテールをいきいきとした台詞回しと芝居で見せる巧みな演出、フェードアウトの暗転を活かした後半の物語展開など、至るところに市川監督の才智が煌いている。四姉妹を演じた女優陣を初め、役者はいずれも代表作にふさわしい名演技を披露している。