1990年 「少年時代」製作委員会
カラー/アメリカン・ビスタ
モノラル/117分
学童疎開の体験を綴った作家・柏原兵三による自伝的小説「長い道」から着想を得て、藤子不二雄Ⓐ自身の戦中体験を盛り込んだ漫画「少年時代」を、藤子Ⓐ自らがプロデューサーとなって監督に篠田正浩を指名し、篠田の後輩にあたる山田太一を脚本に迎えて映画化した。「週刊少年マガジン」連載当初は読者からの反響も限られていたが、1979年の連載終了後に圧倒的な支持を受け、藤子Ⓐが長いあいだ心に温めていた企画である。東京から富山に疎開してきた小学5年生の進二と、地元のガキ大将・武との触れ合いを軸として、1944年の夏から終戦の夏へといたる季節の移り変わりを表す美しい映像とともに、少年たちの心の成長の様子を丹念に描き出している。逼迫する戦況や大人たちの姿はほとんど画面上から遠ざけられ、東京出身者と疎開先の少年たちを取り巻くぎくしゃくした関係や、いじめ等が淡々と描かれる。やがて終戦が訪れて進二が東京に帰る日となり、みるみる小さくなってゆく汽車を必死になって追いかける武の姿で、少年たちの心のわだかまりも一気に解消される。主題歌にはロングセラーとなっている井上陽水の同名オリジナル曲。日本アカデミー賞・最優秀作品賞ほか受賞多数、「キネマ旬報」ベストテン第2位。