1958年 松竹(大船)
白黒/シネマスコープ/モノラル/116分
1955年「小説新潮」に掲載された松本清張の短編小説を、橋本忍脚色、野村芳太郎監督で映画化した作品。東京でおきたピストル強盗事件の共犯者・石井の行方を追う若手刑事・柚木とベテラン刑事・下岡は、石井の昔の恋人・さだ子が住む佐賀市に向かう満員の列車に乗り込む。二人は銀行員の後妻となったさだ子の家の向かいの安宿で張込みを開始した。暑い夏の日々、年の離れた吝嗇な夫と先妻の二人の子どもの世話に明け暮れるさだ子の前に、ついに石井があらわれる。ドキュメンタリー・タッチのリアルな描写が緊迫感を盛り上げる。かつての恋人との再会によって、無気力な日常生活の顔から一変して、生き生きとした束の間の輝きを放つ女さだ子を演じた高峰秀子の姿が印象深い。松本清張原作・橋本忍脚色・野村芳太郎監督のトリオ作品としては他に『ゼロの焦点』(1961)『影の車』(1970)『砂の器』(1974)があり、いずれも話題を呼んだ。野村監督が手がけた松本清張原作のものでは他に『鬼畜』(1977)『疑惑』(1982)がある。「キネマ旬報」ベストテン第8位。