1956年 現代ぷろだくしょん
白黒/スタンダード/モノラル/124分
1951年に山口県で実際に起きた強盗殺人事件「八海(やかい)事件」を題材に、無実の罪を着せられた四人の若者たちの悲劇と、彼等の無実を信じる弁護士の奮闘を描いた社会派ドラマ。本作が封切られた当時は、高等裁判所で有罪を告げられた四人の若者が最高裁へ上告していた時期であったが、今井正は、脚本家の橋本忍と事件に関する綿密な調査を重ねた末に、四人が無罪であるというシナリオで映画化に臨んだ。今井正の回想によると、脚本が完成した段階で、最高裁から映画製作を中止するように圧力がかけられたという。しかし今井は、「万が一、今後四人が有罪になったら監督を辞めよう」という強い信念のもとで、完成にこぎつけた。実際、封切から12年後の1968年に、四人の無罪が正式に確定し、冤罪事件であったことが証明されたのである。「キネマ旬報」ベストテン第1位。