1962年 東宝
カラー/シネマスコープ/モノラル/86分
周囲が唖然としているうちにスイスイと出世街道を登ってゆくお調子者の男を通して、いわゆる高度経済成長の時代を笑い飛ばそうとする風刺的な喜劇。その風刺性は、「努力」や「忍耐」といった美徳をまるで重んじない主人公の人生観ばかりでなく、平均(たいらひとし)なるその役名にも表われているだろう。前年に大ヒット曲「スーダラ節」で売り出したクレージー・キャッツの植木等は、この映画に主演したことで日本の喜劇映画の新しい顔となった。また、畳みかけるようなテンポが印象的な古澤憲吾監督の演出は、悪ノリも辞さない「クレージー」たちの芝居ともマッチし、同じくクレージー・キャッツが主演した「日本一の男」シリーズ(1963~71)などで東宝のサラリーマン喜劇に革新をもたらした。助演の団令子、中島そのみ、重山規子は青春喜劇「お姐ちゃん」シリーズ(1959~63)で知られる若い三人組で、この作品の明朗なタッチを支えている。