1939年 東宝(東京)
白黒/スタンダード/モノラル/74分
浅草オペラ出身で、「カジノフォーリー」の人気者として世に知られ、日本初の本格的レビュー映画『エノケンの青春酔虎伝』(1934、山本嘉次郎監督)以来、戦後にまたがって数々の映画に主演した不世出の喜劇役者、榎本健一。この作品は、エノケンが最も脂の乗っていた時期のもので、防弾チョッキ製造会社で犬猿の仲である二人の社員が、何事にかけても張り合う姿を抱腹絶倒の喜劇に仕立てたもの。ライバル社員に榎本の実家のせんべい卸屋で使用人だったという経歴を持つ如月寛多、会社の課長に浅草オペラ時代の師匠だった柳田貞一という馴染み中の馴染みを配している。監督の中川信夫は主にマキノ正博監督門下で修業を積み、映像のリズム感に優れた時代劇を撮っていたが、この頃はエノケンの座付き監督とも言える位置にいた。戦後は『東海道四谷怪談』(1959)などの傑作を発表し、怪談映画の巨匠としても知られている。