1970年 松竹
カラー/シネマスコープ/モノラル/89分
戦争中、精神障害の真似をしてわざと野戦病院に入り、死を逃れた二人の男は、その後、戦没者をまつる神社へ遺族を案内する怪しげな観光ガイドとして暮らしていた。その男たちのもとへお婆さん、未亡人、少女、ヒッピー風の男が次々と迷い込んでくる奇妙な生活を描いたこの作品は、1960年代以降の松竹喜劇を支えた前田陽一監督の代表作である。そこに息づく屈折した批判精神には師匠の渋谷実監督の影響も垣間見える。その作風について、主演のフランキー堺は、「旅行」シリーズの瀬川昌治監督の「軽喜劇」に対する、前田作品の「重喜劇性」と説明して敬意を表した。劇中の所々に軍歌が挿入されて作品のリズムを築いているが、この映画で「歌」が作品の血肉となっているように、前田監督は歌謡映画にも定評があり、『進め! ジャガーズ 敵前上陸』(1968)などのヒット作を送り出した。