1957年 日活
白黒/スタンダード/モノラル/110分
金もないのに品川遊廓でお大尽遊び、やむなく居残りとなったが遊廓の人気者として要領よく生きてゆく男の姿を描いた時代劇コメディ。その物語の核となったのは「居残り佐平次」をはじめ「芝浜の革財布」や「品川心中」といった古典落語ネタである。監督の川島雄三は、この他にも『愛のお荷物』 (1955)や『貸間あり』(1959)といったテンポのいい喜劇を連発したが、演出家としての幅は広く、男女関係のもつれをめぐるメロドラマなどにも秀作を送り出した才人である。フランキー堺扮する居残り佐平次は、軽妙な味を見せながらも実は胸を病んでいるという設定であり、その姿には川島監督が一貫して作品に投影してきた底深い虚無を垣間見ることができる。また共演者として、日活のトップ・スターになる前の、時代劇初出演の石原裕次郎が、佐平次と同宿して一騒動を起こす勤皇の志士高杉晋作を若々しく演じている。「キネマ旬報」ベストテン第4位。