1952年 松竹(大船)
白黒/スタンダード
モノラル(濃淡型)/97分
井伏鱒二の同名小説と「遥拝隊長」の二つの短編をもとに、ベテランの斎藤良輔がシナリオを書いた風俗喜劇。ある町の老医師・三雲八春は、院長を甥の伍助に譲って一年目。今日は本日休診の札を掲げて、院長を始め看護婦たちを慰安旅行に出してやった。そんな居残りの彼のもとに、次から次へと突飛な事件が舞い込んでくる。新人・三国連太郎が演じた、戦地で頭に負傷したことから発作的に軍隊時代に逆戻りする青年の姿は、見るものに強い印象を残す。監督の渋谷実は、松竹で成瀬巳喜男や五所平之助らの助監督を務め、戦後獅子文六原作の風俗喜劇で監督としての地位を確立、『現代人』(1952)など社会派ドラマでも知られる。ドライな感覚に鋭い風刺を盛り込んだ作風は、この群像喜劇にも存分に活かされている。「キネマ旬報」ベストテン第3位。