1951年 松竹(京都)
白黒/スタンダード/モノラル/132分
松竹30周年記念映画として、時代劇、現代劇、歌舞伎などの松竹スターを総動員して製作された大作。構成の火口会は「書こうかい」の意味で、京都在住のシナリオ作家、八尋不二、依田義賢、柳川真一らの集まりである。物語は「極付幡随院長兵衛」(河竹黙阿弥)と「番町皿屋敷」(岡本綺堂)を巧みに織りこんでいるが、一番の呼びものは、戦前からの時代劇スター、阪東妻三郎(幡随院長兵衛役)と市川右太衛門(水野十郎左衛門役)の対立、葛藤であろう。町奴の阪妻と旗本の右太衛門、町人の意地と武士の体面のぶつかりあい、それぞれの見せ場を十分に用意し、また魚屋宗五郎(月形龍之介)、白井権八(高橋貞二)、小紫(花柳小菊)など歌舞伎や時代劇映画ではお馴染みの人物たちを配して、興趣満点の物語を悠々たる演出でまとめているのは巨匠伊藤大輔である。火口会への脚本料が100万円で、使いきれなかったとは依田義賢のことばである。この年の配給収入第2位作品。