1960年 近代映画協会
白黒/シネマスコープ/モノラル/96分
瀬戸内海の小さな無人島に、一組の夫婦が渡ってきた。千太と妻のトヨには8歳になる太郎と6歳の次郎の二人の子供がいた。わずかな土地を耕し、段々畑に麦とサツマイモを植えて生活している。しかし、島には川も井戸さえもない。小船を漕いで隣の島まで水を汲みにいき、やっと運んできた水を天秤棒でかつぎながら、険しい斜面を登っていく作業は並大抵の苦労ではない。一言もセリフのないこの映画のなかで長男の太郎が急病になり、医者が間にあわず死んでしまう場面は、見るものに悲痛な感情をもたらす。それでも二人は黙々と働きつづけるしかないのだ。新藤兼人監督自ら出資して、わずか13人のスタッフで、現地に合宿生活をして完成されたこの作品は、近代映画協会の自主配給で公開されたが、第2回モスクワ映画祭でグランプリを獲得するにおよび、世界64か国に輸出された。「キネマ旬報」ベストテン第6位。