1961年 東京映画
白黒/シネマスコープ/モノラル/129分
木下恵介監督の下でシナリオの修行を積み、助監督を務めた松山善三の第一回監督作品。聾学校の同窓会で出会い、結ばれた道夫と秋子は、貧しいながらも身を寄せあい、懸命に生きている。やがて夫婦には子どもが生まれ、暮らしも落ち着きかけたが、秋子の素行の悪い弟に、金の問題で繰り返し悩まされる。絶望した秋子を電車の窓ガラス越しに道夫が励ます姿は、手話によって二人の絆が語られる美しい場面であり、印象深い。本作は、松山が自らの監督デビュー作として準備してきたもので、「靴磨きの聾唖者夫婦」という設定に松竹は難色を示したが、東宝のプロデューサー藤本真澄の判断で映画化が実現した。同年の毎日映画コンクール、ブルーリボン賞の脚本賞を受賞するなど高い評価を受け、興行的にも成功した。「高峰秀子の夫」というイメージがあった松山は、本作によって一躍映画監督として確固たる地位を築いた。「キネマ旬報」ベストテン第5位。