1953年 新東宝=スタヂオ・エイト・プロ
白黒/スタンダード/モノラル/108分
東京・千住にある、見る場所によっては四本にも一本にも見えるという巨大な「お化け煙突」。この界隈を舞台に、戦後の日本を生きる庶民の悲喜こもごもを描き出した五所平之助監督の代表作。足袋問屋に勤める実直な中年男・緒方隆吉は、戦災未亡人であった妻弘子とつつましく暮らしている。生活の足しにと二階を税務署員の久保健三と、街頭広告のアナウンス嬢、東仙子に間貸しているが、そこに見も知らぬ赤ん坊が置去りにされていたことから一騒動がもちあがる。実存主義的な作風で知られる椎名麟三の短編「無邪気な人々」を中心に、黒澤明作品で知られる小国英雄が脚本を書き、五所監督自らが主宰する独立プロダクションで製作した「不思議な笑い」を醸し出す一篇となった。「キネマ旬報」ベストテン第4位。