1948年 蜂の巣映画部
白黒/スタンダード/モノラル/84分
清水宏監督は、スター俳優を使ってメロドラマを撮っているよりは、子供や風景を自然のままに写しているほうが良いと考えていた。そんなこともあって、戦後、戦災孤児を引き取って自宅で面倒をみていたが、彼らを登場人物に何か作ろうと思いたち、蜂の巣プロを起こして、本作を製作した。下関に降りたった復員兵は、自分が育った非行少年の更生施設「みかへりの塔」へ帰ろうと、広島、神戸と山陽道を歩いて行く。戦禍の傷跡も生々しい街角や路上で、孤児たちや若い娘の引揚者などと出会い、さらに旅を続けていく。全篇ロケーション撮影、出演者もすべて素人といった素朴さのうちに、朴訥としたこの監督特有の味わいと時代を見つめる目がある。「キネマ旬報」ベストテン第4位。