1947年 東宝
白黒/スタンダード/モノラル/100分
新憲法発布を記念して、憲法普及会が映画各社に提案した企画のうち、「戦争放棄」の題材を担当した東宝が、伊藤武郎プロデュースのもと、記録映画作家の亀井文夫と劇映画監督の山本薩夫の共同監督により製作した、終戦直後の日本映画を代表する一本。戦死公報を受けた妻・町子が、前線で精神的な障害を負って帰還していた、夫の親友・康吉と再婚する。しかし、度重なる空襲により、康吉の病状は悪化。そこに中国で捕虜として命拾いをした夫・健一が帰還し、三人の間に新たな悲劇が襲う。D・W・グリフィスの映画『イノック・アーデン』を下敷きに、ニヒリズムと解放感の錯綜した戦後心理を捉えた八住利雄の脚本、トラウマを抱えた難しい役どころに挑んだ池部良の熱演、記録映画のフッテージを盛り込みながら、戦地、銃後そして戦後の日本の姿をリアルに再現した映像など、見応えのある大作となっている。占領軍による検閲により30分以上が削除されたものの、観客・批評家からの評価は高く、「キネマ旬報」ベストテンで第2位に選ばれた。