1957年 東宝
白黒/スタンダード/モノラル/133分
「国境の長いトンネルを抜けると雪国であった」という有名な冒頭ではじまる川端康成の不朽の名作小説を映画化したもので、文芸映画を得意とした豊田四郎が監督した。日本画家の島村(池部良)は、戦争へと突き進む暗い世相のなかで、一年前に越後湯沢の温泉場で逢った芸者・駒子のことが忘れられず、再びその温泉場を訪れる。二人は互いに惹かれ合うが、駒子は義母とその息子を養うため旦那を持っており、島村は東京に妻子がいた…。徐々に惹かれ合ってゆく島村と駒子の心理が、熟練した豊田四郎の細やかな演出で表現される。また、雪国の空気と生活感がにじみでる映画美術も、本作を格調高いものにしている。岸惠子は本作の製作中に、フランス人映画監督のイヴ・シャンピとの婚約を発表して時の人となり、封切と時を同じくしてフランスへ旅立った。原作小説は1965年にも、岩下志麻・木村功主演で再映画化されている。