1953年 新世紀映画社=文学座
白黒/スタンダード/モノラル/130分
1937年に創設された文学座が、戦後その全盛期を迎えるにあたって発案・製作された作品。夭折した明治の作家・樋口一葉の晩年の短篇小説「十三夜」「大つごもり」「にごりえ」を原作に三話構成のオムニバス形式を採り、当時新鮮な現代劇で注目されていた今井正監督が、京都映画株式会社の撮影所(旧松竹下加茂撮影所)で完成させた。役者の緊張を強いる簡潔なセットの中で徹底したリハーサルが繰り返され、繊細な計算のもと作り出された明治の光と闇の中に、過酷な状況を生きざるをえない女たちの一瞬が捉えられている。この年、今井監督は大ヒット作『ひめゆりの塔』も演出しているが、「キネマ旬報」ベストテンでは『にごりえ』が第1位、『ひめゆりの塔』が第7位に選出されている。