1990年 NCP=サントリー
カラー/アメリカン・ビスタ
モノラル/96分
桜の咲く頃、学校創立記念日の恒例行事としてチェーホフの戯曲「桜の園」を上演しようとする女子高校の演劇部。原作である吉田秋生の漫画作品ではそうした演劇部員たちの春夏秋冬を描いているが、その映画化にあたって中原俊監督らはドラマを「桜の園」の開演前の2時間だけに絞り、部員たちの行動や心理的なざわめきを多層的に描く群像劇に作り上げている。登場人物のほとんどが女子高校生という設定もさることながら、主要な人物だけでなく脇役の部員たち一人一人にまで存在感を際立たせたじんのひろあきの脚本、そして中原監督の新境地とも言える集団的な演出法も斬新であった。つみきみほ、中島ひろ子といった若手女優の好演もあって各方面で高く評価されたこの作品は、その年の「キネマ旬報」ベストテンの第1位、監督賞、脚本賞ほか多くの賞を受賞し、現代日本映画の名作としての地位を獲得している。