1969年 創造社=ATG
カラー/シネマスコープ/モノラル/97分
日本中を放浪して車にわざとぶつかり、言いがかりをつけてお金を請求する「当たり屋」の少年とその家族の物語。傷痍軍人の父は、戦後の日本社会で自分の居場所を見つけられず、家族を連れて全国を放浪している。少年の母親は少年と血がつながっていない。少年は、父と母から酷使されても、この家族という共同体から逃げ出さず、この共同体が崩れないように、自分の体を傷つけながら「当たり屋」を続けることを選択する。松竹ヌーベルバーグのひとりとして1950年代末から野心作を立て続けに監督してきた大島渚は、映画という表現形式を通じて日本における国家や国民の枠組みそのものを批判的に追求してきた映画監督であるが、本作は大島の思想が見事に映像化された代表作のひとつ。ヴェネチア国際映画祭に出品されて高い評価を得た。「キネマ旬報」ベストテン第3位。