1961年 日活
白黒/シネマスコープ/モノラル/108分
横須賀の「どぶ板通り」を舞台に、アメリカ軍基地の残飯を使った養豚で一儲けを狙う落ち着きのないチンピラの欣太(長門)と、彼を慕う春子(吉村)の無軌道ではかない恋の行方を描き、安保体制下にある敗戦国日本の姿をえぐり出した風刺劇。本作でデビューした吉村実子が力強いヒロインを好演。また、終盤の豚の群れが暴走するシーンなどの独創的な演出や、撮影所内に見事に再現された「どぶ板通り」のセットもみどころ。『「エロ事師たち」より人類学入門』(1966)などでも知られる今村昌平の作風は、しばしば「重喜劇」とも称され、人間の泥臭いエネルギーを発散する映画が多いが、その本格的な始まりとなった一本である。