1957年 東映(東京)
カラー/シネマスコープ
モノラル/130分
前作『米』(1957)の好成績を得て、製作会社の東映が再び今井正監督と組んで作り上げた戦後青春映画の代表作。1954年3月に第五福竜丸がビキニ環礁で死の灰を浴び、この頃、日本では改めて原水爆問題がクロース・アップされていた。脚本の水木洋子によれば、この作品は同じ今井監督で「戦争と青春」を描いた『また逢う日まで』(1950)の姉妹篇として「戦後と青春」を描こうとするものであった。焼け跡の中を懸命に生きる不良少年と少女の純愛物語に、原爆後遺症の問題が絡んでくるのも、このような社会的背景を抜きにしては考えられまい。中原ひとみの鼻から、流れ落ちる一筋の血が伝えるものは、たしかに原爆への怒りである。だが、それは今井監督の静かな演出によって、より深々とした印象を与えるものになっている。常に周りの状況に押しつぶされそうになりながら、必死の抵抗を続ける恋人たちの姿は、この監督の作品に一貫する重要なモチーフである。「キネマ旬報」ベストテン第2位。