1954年 松竹(大船)
白黒/スタンダード/モノラル/155分
壷井栄が1952年に発表した児童小説を、当時気鋭の中堅監督であった木下惠介が脚色・監督した作品。小豆島の豊かな自然を背景に、戦争をはさんだ激動の時代を、小学校の教師とその教え子たちの成長を通して描き、国民的大ヒットとなった感動大作である。風光明媚な島の自然をとらえるために長期にわたるロケーションが行われたのはもちろんだが、セット撮影であることを感じさせず、「自然のように」見せる配慮が画面の隅々まで行き届いていることも見逃せない。小学唱歌のみを用いた音楽も特徴的である。木下はこの作品の成功で、一般には叙情派監督として大きく印象づけられることになった。冒頭の場面と同じく再び自転車に乗って、岬の分教場に向かう主人公、大石先生を小さく映し出すラストシーンには、毫も変わらぬ自然、その中を点景のごとく生きていく人間、そして人間の営みに対する木下の思想が集約されている。「キネマ旬報」第1位をはじめ、この年の映画賞を独占した。