1951年 東宝
白黒/スタンダード/モノラル/97分
黒澤、溝口、小津に続く〈日本の四番目の巨匠〉として、世界中の映画批評家から熱い視線を受ける成瀬巳喜男監督の代表作。監督を〈世界のナルセ〉の地位に押し上げる功のあったアメリカの映画批評家オーディ・ボックなどは、本作を成瀬作品のなかでもっとも好きな作品と語っている。結婚生活も5年が過ぎ、倦怠期を迎え始めた夫婦。そこに突然、夫の姪が転がり込んできたことから、単調だった二人の暮らしに思いもよらぬ波乱が生じはじめる。美男美女の主演二人が、本作ではともに中年にさしかかり、平凡で退屈な男と所帯やつれした女になったさまを、見事に好演している。原作は林芙美子による未完の新聞連載小説。その結末を含め、脚色を委ねられた田中澄江と井手俊郎の良質な叙情と煥発する才気とが美しく調和し、繊細極まりない成瀬の演出と玉井正夫の撮影のなかに開花している。「キネマ旬報」ベストテン第2位。