天国と地獄

天国と地獄

1963年 東宝=黒沢プロダクション
白黒/シネマスコープ/モノラル/143分

解説

この作品は、アメリカの推理作家エド・マクベインの「キングの身代金」を映画化したものであるが、連れ去る子供を取り違えたとしても、その犯人の脅迫は成立するとのヒントを借りただけで、ほとんどのトリックは黒澤をはじめとする脚本家たちのアイディアである。この映画のクライマックスは二つある。一つは特急こだまのトイレの窓から身代金の3000万円を投げ出す場面。これは実際運行される車両を借り切って、数台のカメラで同時間に撮影された。もう一つは、極刑を課すために犯人を泳がせ、新たな殺人現場におびき出す場面である。『用心棒』(1961)や『椿三十郎』(1962)で、これまでの時代劇にはなかった迫力を演出した黒澤であったが、この作品でも、サスペンス映画に斬新な演出を試みている。〈天国〉に住む富豪と対照的に〈地獄〉に住む青年医師を演じた山崎努は、文学座の新人俳優であったが、この作品で一躍注目を浴びた。「キネマ旬報」ベストテン第2位。

スタッフ

原作
エド・マクベイン
脚本
小国英雄
菊島隆三
久板栄二郎
脚本・監督
黒澤明
撮影
中井朝一
斎藤孝雄
照明
森弘充
録音
矢野口文雄
音楽
佐藤勝
美術
村木与四郎

出演者

権藤金吾
三船敏郎
戸倉警部
仲代達矢
権藤の妻 伶子
香川京子
権藤の秘書 河西
三橋達也
荒井刑事
木村功
田口部長刑事
石山健二郎
捜査本部長
志村喬
運転手 青木
佐田豊
犯人
山崎努