1963年 日活
カラー/シネマスコープ/モノラル/87分
川端康成による有名な同名小説の4度目の映画化である。日活では初めての試みで、当時同社の若手スターだった吉永小百合と高橋英樹が主演した。宇野重吉扮する大学教授の回想という形式を採っているのが特徴で、現在と過去をカラーと白黒で使い分け、現代の女性と回想中の踊り子を吉永に二役で演じさせたことについて、西河克己監督はこれまでの『伊豆の踊子』と違った試みをやりたかった、と述べている。原作中の有名な台詞「いい人は、いい人ね。」を意図的にシナリオから削除したことにも、新しい「踊子」像を作ろうとした野心が表れているが、田中絹代出演による初の映画化(1933)や、後の映画化と比較しても、全体としてはセンチメンタルな作品に仕上がっている、と言えるだろう。川端はこの作品のロケーション撮影を訪れているが、完成した作品について川端が各地で高い評価を公言したので、西河監督がかえって戸惑ったという逸話も残っている。